AX・省人化

AX人材とは?中堅企業が推進役を決める3つの道と4つの役割

目次

社長から「AX人材をどう育てるか考えて」と言われ、研修の案内を並べている。そんなとき、先に決めたいのは講座名より誰にどの業務を任せるかです。経済産業省の検討資料は、全社員に共通する力と、変革を進める人の役割を分けて整理しています。この記事ではその2層を読み解き、育成・採用・外部の使い分けを考えます。最後には推進役の候補を1人挙げ、最初に渡す1業務を選べるようにします。

AX人材の確保を社内で説明したい方へ

業務の見極めから実装の進行管理まで、
社外AX部が担います

  • 手段を選べる立場から入る。特定のツールを売っていません
  • 実装の進行管理まで引き受けます。提案だけで終わりません
  • 置き換えない方がよいという結論も、そのままお出しします
資料を無料でダウンロード

フォーム入力は30秒ほどで完了します

》【無料DL】『業務棚卸し 実践テンプレート集』|型と記入例

AX人材とは?AIを前提に業務と組織を組み直す人

「AX人材」は、AIの操作に詳しい人だけを指す言葉として読むと狭すぎます。経済産業省の検討資料から、企業で何を変える人なのかを見ます。

経産省WGの企業AXの定義(案)から逆算すると

経済産業省の「AX時代におけるスキルのあり方検討ワーキンググループ(WG)」の第5回事務局資料には、企業AXの定義(案)があります。定義案は企業AXを、生成AIによる製品・サービスやビジネスモデルの変革としています。人とAIの役割や業務の再設計、組織・文化の変革も含みます。AX人材は、人とAIの役割から業務を組み直す担い手と言えます。

DXとの共通点は、業務や組織を変えて競争優位につなげる点です。違いは仕事の主語が「人」から「人+AI」へ変わることです。AXとは何かを解説した記事で全体の進め方を扱います。

(出典:経済産業省「第5回AX時代におけるスキルのあり方検討WG 事務局資料」)

AIに詳しい人を指す言葉ではない

業務で使うAIを選べても、現場の仕事の流れと判断する人が分からなければ、仕事の組み直しは進みません。第4回事務局資料は、AXを推進する人の役割として人とAIの分担を前提にした業務再設計や、現場・技術部門・人事の間の調整を挙げています。ツールの操作だけで任せる人を決めない理由がここにあります。

例えば問い合わせ対応を扱うなら、回答案をAIに作らせる作業だけを切り出さない。受付から最終回答までを見渡し、どの判断を人が担うかを話し合う人が要ります。

(出典:経済産業省「第4回AX時代におけるスキルのあり方検討WG 事務局資料」)

公式の定義はまだ検討中。2026年4月からWGで議論

この整理を、確定した政府の職種定義として社内資料に写すのは早計です。WGの掲載ページには、2026年4月21日の第1回から9月1日の第5回までの開催日が並んでいます。第5回事務局資料も「定義(案)」と記し、報告書の構成をイメージとして示しています。掲載ページには報告書がまだありません。

したがって、以下の4つの力と4つの役割は検討中の整理として使います。社内の採用要件を固定する規格として扱うより、自社の業務で何が不足しているかを話すための物差しにすると役立ちます。

AX人材は2層に分かれる。全員に要る力と、推進役に要る役割

研修案内の対象者を決める前に、全員が仕事で使う力と、組織の変革を進める役割を分けます。第5回事務局資料が第4回の議論を踏まえて並べた2層です。

AX人材の2層:全社員に要る4つの力と推進役の4つの役割

全社員に要る4つの力:問い・文脈・判断・自主性

検討資料は、すべてのビジネスパーソンに共通する力の変化を4行で示します。AIの答えを速く得ることより、何を問うか、答えをどう読み取るかに重心が移るという整理です。

力 AIを使う仕事での姿
問いを立てる 新たな課題や価値を見つけ、問う領域を広げる
文脈を理解する 組織の暗黙知を踏まえて出力を評価し、意味を伝える
判断し責任を持つ 根拠を示して判断し、実行と説明につなげる
自主性・学び続ける姿勢 自分の担当領域を越えて学び、挑戦する

この4つは推進役だけの専有物ではありません。ただし資料は、担う仕事や影響範囲によって求める水準が違うとも述べています。全社員向けには、自分の仕事でAIの答えを評価する場面から考えると具体的です。

推進役に要る4つの役割:経営・ガバナンス・業務再設計・職種横断

推進役について、検討資料は次の4つを並べます。これは資格の一覧ではなく、変革を進めるときに必要な活動を見渡す表です。

役割 社内で担う仕事の例
経営・事業変革をリードする 事業への影響を考え、関係部門と意思決定する
ガバナンス・信頼をつくる 出力の評価ルールやリスクへの対応を整える
業務プロセスを再設計する 工程と人・AIの役割分担を組み直す
職種横断で推進する 異なる専門性をつなぎ、連携を進める

例えば社内ルールを作る仕事は2行目に当たります。その際の参照先には、AI事業者ガイドラインを解説した記事も使えます。表を読んだら「今の業務で誰がどこまで担うか」を各行に書き込んでください。ガバナンスの役割で最初に整える台帳と方針は、AIガバナンスを解説した記事で手順にしています。

4つの役割を1人に背負わせない

推進役を1人決めることと、4つの活動をその人だけに負わせることは別です。第5回事務局資料は、特定の職種に過度に集約せず、複数の担い手が職種をまたいで進める方向を示しています。第4回資料でも、業務プロセス全体の設計は一部の推進人材に求める力として議論されました。

最初の推進役は、担当者をつなぐ窓口と進行役にできます。経営上の採否は責任者が判断し、現場の手順は現場の担当者が示す。安全に使う条件も関係者と決めます。人を探す際は万能さを条件にせず、どの役割を誰と分けるかまで書くと候補を挙げやすくなります。

\推進役に最初に渡す1業務を選ぶには、業務ごとの件数と時間を先に書き出します。そのための様式です/

【無料】業務棚卸しテンプレートを受け取る

フォーム入力は30秒ほどで完了します

なぜAX人材が足りないのか

「適任者がいない」と感じる理由は、AIの専門知識だけに限りません。現場を知る人材、仕事を通じて育つ機会、必要な力の見立てが同時に問われています。

現場の知見とAIの基礎知識を持つ人が足りない

第5回事務局資料は、情報処理推進機構の「DX動向2026」を引用し、現場の知見と基礎的なAI知識を持って自社導入を進める従業員が不足していると示します。

採用や研修の相談前に、現場の知見・AIの基礎・部門をつなぐ時間のどれが足りないかを書きます。「AX人材が足りない」の一言では、任せる仕事の範囲が定まりません。

(出典:情報処理推進機構「DX動向2026」・上記WG資料が引用)

入口の仕事がAIに置き換わり、OJTで育つ道が細くなる

検討資料は、経験の浅い人が担う業務の一部を生成AIが代替し、職場で仕事を通じて学ぶOJTの内容も変わると論点を置いています。従来の手順を繰り返す機会が減れば、その仕事の前後や判断の理由をどう教えるかを考える必要があります。

新人に任せる作業を洗い出す際は、AIに任せる部分と、人が経験すべき判断を分けます。顧客との対話や例外への対応を誰と一緒に経験するかまで決めれば、AI導入と育成を同じ業務の中で考えられます。

少ない人数で同じ業務を回す会社も出ている

第5回事務局資料は、以前より少ない人数で同じ業務量を実施しようとする企業が出ていると記します。参考事例のDeNAは、半分の人員で現業を成長させ、残りを新規事業へ移す方向性を示しました。資料によれば、空いた時間を既存の仕事で埋めてしまうことを見越し、先に人材を移す方針です。

自社で業務時間が空いた場合、担当者を何に振り向けるかまで決める必要がある、という示唆として読めます。業務の組み直しと人の配置を一緒に考える理由です。

AX人材を確保する3つの道:育成・採用・外部

必要な役割が見えたら、育成・採用・外部の道を考えます。3つは同時に使えます。まず何を社内に残すかで比較しましょう。

AX人材を確保する3つの道:育成・採用・外部

育成:研修だけでは推進役は育たない。実案件を渡す

研修でAIの知識を得ても、仕事に戻って使う場がなければ、変革の経験は積めません。第5回事務局資料に載るSMBC日興証券の事例では、現業を抱えたまま時折研修に参加する方式は育成の速度が上がらず、習得後の活用機会も乏しいことが課題でした。

同社のデジタルトレーニー制度では、所属部署を一定期間離れて集中的に学び、その後に出身部門の実案件でOJTを行います。参考になるのは、学ぶ時間と実案件を一続きにする設計です。誰のどの仕事で試すかを研修前に決めます。

採用:経験で人を選ぶ方法には問いもある

社外から人を採るなら、まず4つの役割のどこを担う人が要るかを募集要件に書きます。現場の知見を持つ候補か、部門間の進行を担える候補かで見る経験は変わります。採用だけで既存の業務や意思決定の仕組みまで変わるわけではありません。

第5回事務局資料は、スキルが変わる速度が上がる中で過去の経験による人選に限界があるのではないかと問いかけます。これはWGの問いかけです。確定した結論としては扱えません。採用時には職歴の名前に加え、未知の業務で問いを立て、現場と役割を分けて進めた経験を聞きます。

外部:推進役の役割の一部を借りる

社内に進行を担う人がいても、業務を組み直す設計や部門をまたぐ話し合いには、外部の経験を借りる選択があります。第5回事務局資料の4つの役割に当てはめると、業務再設計の進め方や職種横断の進行が依頼範囲の候補です。一方、何を事業の目的とするかを決める経営判断と、顧客や現場の知見は社内の人が持ちます。

依頼前に、対象業務と社内の決定者、外部に求める成果物を1枚に書きます。例えば現行の工程図と、新しい人・AIの役割分担案です。外部の相談先を探すときは、AI導入コンサル会社の比較記事も参照できます。

業務の進め方を話し合う担当者たち

3つの道の組み合わせ方

自社に残したい知識と、今すぐ不足する役割を見て組み合わせます。下表では、各道を選ぶときに確保する時間や依頼範囲を比較します。

道 時間と依頼範囲 社内に残るもの 向く場面
育成 学ぶ時間と実案件の時間を確保する 現場を知る人の実践経験 候補者と対象業務がある
採用 要件づくりと選考の時間を取る 新たに加わる人の経験 担い手そのものが足りない
外部 依頼範囲と引き継ぎを設計する 社内で受け取った工程や判断基準 特定の設計・進行を補いたい

例えば社内の現場担当を推進役に据え、足りない設計の進行だけ外部に頼む。採用した人に実案件を渡して育てる道もあります。どの組み合わせでも、最終判断をする社内の人と、学びを引き継ぐ人を決めておきます。

中堅企業は最初の推進役を誰にするか

ここまでの整理を人選に移します。最初から全社の変革を任せる人を探すより、現場を知る候補と、試す業務を一緒に決めるほうが動き出せます。

候補は現場の知見がある人。AIの知識は後から足せる

第5回事務局資料に載ったSMBC日興証券作成の資料は、「ドメイン知識」を業界・会社・顧客を理解して行動を決めるための知識と説明しています。同社の整理では、業務知識やプロセス知識にはAIで補える余地が大きいとされます。一方で顧客知識や実践で得た判断、経験知の代替は容易でないとしています。

候補者を挙げるときは、顧客から何を聞き、例外時に何を基準に決めているかを本人に語ってもらいます。AIの操作に慣れている人も候補ですが、現場の事情を言葉にできるかを併せて見ます。基礎知識は育成の対象にできても、顧客との関係や過去の判断を短い講座だけで渡すのは難しいからです。

最初に渡すのは1業務の組み直し

推進役に渡す仕事は、身近な課題を1つ選び、今の方法と新しい方法を比べるところから始めます。第5回事務局資料の論点は、新旧の方法で品質を比べることを挙げます。関係者を巻き込み、実際の運用を変えるところまで含みます。試すだけで終えず、運用を誰が引き受けるかを決める流れです。

対象業務を選んだら、今の工程と担当者を書き、AIに任せる候補と人が判断する箇所を分けます。品質を見比べる相手も決めます。具体的な着手順はAXとは何かを解説した記事の5ステップも参考にしてください。最初の成果物は、新しい工程と役割分担を書いた1枚で足ります。

研修を選ぶのは、推進役と業務を決めた後

研修案内を比べる前に、社内で次の3点を書き出します。

  • 誰が最初の推進役となり、誰が経営上の採否を決めるか
  • どの1業務を試し、現在の品質と何を比べるか
  • 推進役を現業からいつ、どの程度外せるか

この3点があれば、研修に求める内容を「AIを広く学ぶ」から「担当業務の工程を組み直すために足りない知識」へ絞れます。逆に時間を渡せないなら、受講後の実践も難しくなります。3点を1枚にまとめて社長に返し、人選と対象業務の採否を決めてもらいます。研修会社への問い合わせも、その1枚を使って始められます。

\推進役の候補と最初の1業務を、4つの役割に沿って一緒に決めます/

【無料】推進役と最初の1業務を一緒に決める

無理な営業はいたしません。相談のみでも歓迎です

AX人材の育成でつまずく3つの壁

推進役を決めても、育成を仕事の予定に入れなければ止まります。育成の節で見た事例を踏まえ、実案件と時間をどう確保するかを具体化します。WG資料の引用も手がかりに、育成目標まで3つの壁を見ていきます。

学んでも使う場がない

研修を先に選ぶと、受講後に学んだことを使う場がないままになるおそれがあります。次の講座を足す前に、受講者に渡す実案件を選びます。例えば問い合わせ対応なら、回答案の作成から担当者による点検までを試す範囲にします。

案件には現場の責任者と、成果を受け取る人も要ります。試す前に従来の回答を比較用に残し、どの状態なら使えると判断するかを責任者と決めます。受講後の予定表には、試行日と結果を見直す日を入れてください。うまくいかなかった箇所も記録すれば、次に学ぶ内容を実案件から選べます。

推進役が現業と兼務で時間が取れない

学ぶ時間を作るには、推進役の通常業務を引き取る人が必要です。中堅企業で丸ごと異動が難しい場合は、本人の仕事を定例作業と随時対応に分けます。それぞれの引き取り手と引き継ぐ期間を決め、受け手側の仕事量も現場の責任者と調整します。

「空いたら進める」では、関係部門との会議も実案件の見直しも後回しになりがちです。予定表に実案件に使う時間を確保し、その時間帯の問い合わせ先を部署内で共有します。引き継げない仕事が残るなら、試行の範囲や開始日を見直します。推進役の任命と時間の確保を、同じ会議で決めてください。

何ができれば一人前かが決まっていない

第5回事務局資料が引用する「DX動向2026」では、半分以上の企業がDX推進に必要なスキルを把握できていません。自社でも「AIに詳しくなる」を育成目標にすると、受講後に何を任せるか判断しにくくなります。

そこで、先の4つの役割から担当範囲を選び、実際の業務でできたことを記録します。例えば業務再設計を担う人なら、現行工程と新工程を示し、関係者と試行結果を比べたかを見ます。4つすべてを一人前の条件にしません。担当役割と仕事の成果をそろえて、次の案件を渡すかを決めます。

AX人材に関するよくある質問

用語が似ていても、資料ごとに何を指すかは異なります。社内で聞かれやすい3つの疑問を短く整理します。

Q. AX人材とDX人材の違いは何ですか

第5回事務局資料の企業AXの定義(案)は、DXとの共通点に製品・サービスと業務・組織の変革を挙げます。そのうえでAXの違いを、生成AIやAIエージェントによって仕事の主語が「人+AI」になる点とします。

したがって人材を見るときも、デジタル化の経験だけで決めず、人とAIの役割をどう設計したかを聞くと具体的です。AXそのものとDXとの差分は、AXとは何かを解説した記事でも扱っています。

Q. AI人材とAX人材は同じですか

文部科学省の「AX時代に求められる人材像について」は、人工知能基本計画の記述を引用し、AIの利活用や開発を担う「AI人材」の育成・確保に触れています。一方、この記事でいうAX人材は経済産業省WGの検討資料をもとに説明しています。AIを前提に業務や組織を変える担い手です。出どころの違う語を同じ職種名として扱わないのが安全です。

研修案内に「AI人材」とあれば、開発の知識を学ぶのか、現場での利活用を学ぶのかを内容で見ます。推進役に渡す業務との接点で選んでください。

(出典:文部科学省「AX時代に求められる人材像について」)

Q. 中小企業でもAX人材は必要ですか

必要な活動は会社の規模だけでは決まりません。まず、AIを使って組み直したい業務があるかを見ます。対象が1業務なら、最初の推進役もその仕事を知る人から選べます。経営上の判断やルール整備は、担当者が一人で背負う形にしなくて構いません。

候補者が見つからなければ、対象業務の現場担当と決定者を先に決め、足りない設計や進行を育成・採用・外部のどの道で補うかを考えます。

まとめ

AX人材を考えるときは、全社員に共通する問い・文脈・判断・自主性と、推進役に求める経営・ガバナンス・業務再設計・職種横断を分けます。経済産業省WGの検討資料を手がかりに、自社の仕事で担う範囲を具体化します。

推進役を確保する道は育成・採用・外部の3つ。どれか1つに決め打ちせず、社内に残す判断と現場の知見を軸に組み合わせます。まず現場を知る候補を1人挙げ、組み直す1業務と使える時間を決めてください。その後で必要な研修や外部の役割を選べば、学ぶ内容が実際の仕事につながります。

》【無料DL】『業務棚卸し 実践テンプレート集』|型と記入例

ACCELPORT
Accelport株式会社 編集部

業務の見極めから実装の進行管理までを引き受ける「社外AX部」を提供しています。現場で得た知見をもとに記事を制作しています。

この記事をシェア
X (Twitter) LINE
SERVICE社外AX部御社のAX推進部を、外から担う。見極めから実装の進行管理まで。›

『業務棚卸し 実践テンプレート集』を無料で配布しています

型と記入例です。読んだその日から自社で使えるようにまとめました。

フォーム入力は30秒ほどで完了します

型と記入例

資料を無料でダウンロード