BPO・外注戦略

情シスアウトソーシングは中小企業に必要?規模別3つの答え

目次

「IT、外に出せないの」と社長に聞かれて、その場で答えられなかった。総務や経理と兼任でPCの調達とアカウント発行をさばいている会社では、よくある場面です。

外注するかどうかは、費用と社内に残る仕事で決まります。兼任のまま続けたほうが安い会社もあるので、その場合も含めて比べます。

この記事では外注・採用・派遣・兼任継続の4つを年額で並べ、自社がどれに当たるかを決めます。判断の材料は従業員数ではなく、端末台数と拠点数です。社長に出す1枚を、この記事で作ってください。

中小企業の情シスアウトソーシングを規模別3つの答えで整理した図

中小企業に情シスの外注が要るか判断したい方へ

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中小企業の情シスは誰がやっている?兼任かゼロが実態

外注の話に入る前に、いまの体制を言葉にします。中小企業のIT担当は、だいたい次の3つのどれかです。

  • 総務や経理がほかの仕事と兼任している
  • 専任が1人だけいる(ひとり情シス)
  • 誰も決まっておらず、詳しい人が都度対応している

どれに当たるかで、外注したあとに社内へ残る仕事の量が変わります。総務や経理と兼任しているなら、作業量に加えて判断に迷う時間にも目を向けてください。

IT担当ゼロの会社は、総務か経理が兼ねている

中小企業では、IT担当を組織として決めていない会社が多数派です。

情報処理推進機構(IPA)の「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」では、回答した4,191社のうち専門部署や担当者があるのは9.3%でした。兼務で担当者を置く企業が21.0%で、残る69.7%は各自の対応です。

従業員規模 専門部署(担当者)がある 兼務だが担当者が任命されている 組織的には行っていない
小規模企業者(n=2,775) 4.4% 11.1% 84.5%
中小企業 100名以下(n=1,121) 14.8% 37.6% 47.6%
中小企業 101名以上(n=295) 13.6% 51.9% 34.6%

兼務は2016年度の35.1%から下がり、各自の対応が56.4%から増えています。担当を決めず、対応を各自に任せる会社が増えています。

設問は情報セキュリティ対策の体制についてで、情シス業務全体の数字ではありません(出典:IPA 2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査報告書)。

ひとり情シスと兼任情シスは、困りごとが違う

上位の記事はこの2つを「人材不足」でひとまとめにしますが、外注で解けるものが違います。

ひとり情シス 兼任情シス
立場 IT専任が1人 総務・経理と掛け持ち
詰まるところ 量が処理しきれない 判断の根拠を持っていない
止まる場面 本人が休んだ日 専門的な相談が来た日
外注で減るもの 作業量 調べる時間
外注しても残るもの 判断と優先順位づけ 判断と優先順位づけ

ひとり情シスが買うのは手です。兼任情シスが買うのは、判断を相談できる相手です。同じ月10万円の契約でも、前者は作業件数で、後者は回答の速さと正確さで評価が決まります。

自社がどちらかで、見積もりを依頼するときに渡す情報も変わります。ひとり情シスなら月の作業件数、兼任情シスなら過去半年で判断に困った相談の内容です。

外注を探し始めるきっかけは3つに偏る

外注を調べ始める理由は、ほぼ次の3つに集まります。

  • 退職:担当していた人が辞める、または辞めると言い出した
  • 更新:リース満了やOSのサポート終了で、端末をまとめて入れ替える
  • 事故:ウイルス感染や誤送信が起きて、社長が対策を指示した

どれで動き始めたかで、最初に外へ出す業務が変わります。退職なら台帳とアカウント権限の引き継ぎ、更新ならキッティングと調達、事故ならログと権限の棚卸しです。

3つのうちどれで動いているかを1行で書き出してください。それが見積もり依頼の1行目になり、提案の中身が揃います。

外注する前に決めることは?社内の窓口を先に置く

外注先から「今日の依頼はどれを先に進めますか」と聞かれたら、社内の誰が答えるでしょうか。作業を任せても、その優先順位は社内で決める必要があります。契約前に確認するのは次の4点です。

  • 誰が窓口になるか
  • その人にどこまでの決定権を渡すか
  • 台帳とアカウントの管理者を誰にするか
  • 社内に残す業務をどこで線引きするか

窓口の指名と合わせて、決められる範囲と管理の担当も整理します。

発注側に立てる人がゼロだと、品質を判断できない

外注がつまずく原因は、契約書の不備だけではありません。日々の優先順位を決める人が社内にいないことです。

社内の窓口がいる場合といない場合で、依頼の流れがどう変わるかを示した図

外注先には毎日こういう問いが届きます。「今日の3件のうちどれを先にやるか」「この依頼は契約の範囲内か」「この回答で終わりにしてよいか」。判断する人が社内にいないと、外注先が自分で決めることになります。

悪意がなくても、着手しやすい順に片付いていきます。営業部の障害より、総務からの備品依頼のほうが早く終わるからです。半年後の「頼んだのに肝心なところが動いていない」は、この形から起きます。

優先順位の情報は社内にしかありません。渡せないものを渡したつもりになっている状態が、高くつきます。

窓口は専任にしない。兼任者を1人指名する

窓口は兼任のままで構いません。求められるのは作業より、優先順位を決めることであるためです。

必要なのは役割を1人に寄せることで、時間ではありません。やることは次の3つに絞れます。

  • 社内からの依頼を受け取り、外注先へ渡す
  • 依頼の順番を決める
  • 月1回の報告を受けて、翌月の範囲を決める

複数人で受けると同じ依頼が二重に飛び、外注先の工数がそのぶん消えます。窓口を1人にするだけで、契約時間の消費が目に見えて減ります。逆に、この1人を決めないまま契約すると、月額を払いながら社内の負荷が変わらない状態になります。

台帳とアカウント権限は社内に置く

管理者の権限は自社に残してください。業者を替えるときに詰まるのがここであるためです。

社内に置くものは4つです。

  • IT資産台帳(端末・ライセンス・回線の一覧)
  • 各SaaSの管理者アカウント
  • ドメインとメールの管理権限
  • ネットワーク機器の管理者パスワード

外注先の管理下だけに置くと、解約を申し出た瞬間に引き継ぎの交渉が始まります。契約前に「管理者権限は自社が保持し、作業者権限を付与する」と決めて書面に残してください。ここを押さえておくと、あとで外注をやめる判断ができます。

オフィスでIT台帳とアカウント一覧を確認している場面

社内に残す業務の線引きは、先に決めておく

外へ出す業務を考えるときは、社内に残す業務も一緒に整理します。外へ出しにくいのは「判断が入る業務」「契約や交渉」「セキュリティの最終判断」「情報の分類」の4領域です。

それぞれを残す理由と線引きの基準は、情シスのアウトソーシングはどこまで?残す業務7つの基準にまとめています。依頼する範囲を具体的に決めるときに使ってください。

次の章では、外注・採用・派遣・兼任継続を年額で比べます。金額と合わせて、それぞれに任せられる範囲を見ていきます。

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外注・採用・派遣・兼任継続はどれが得?年額で並べる

選択肢は4つあります。並べるときは年額にしてください。採用には賞与と社会保険の会社負担が乗り、派遣には稼働の下限があるためです。

  • 外注(業務委託):範囲を決めて月額を払う
  • 採用(雇用):社内SEを1人雇う
  • 派遣:派遣会社から人を受け入れる
  • 兼任継続:いまの担当者が兼任のまま続ける

4つを同じ物差しに直すと、順番が入れ替わることがあります。

選択肢は4つ。中小企業が最初に落とすのは派遣

4つのうち、中小企業で最初に外れるのは派遣です。

選択肢 年額の目安 向く状態 弱点
外注(業務委託) 12万〜60万円(軽いサポート)/96万〜300万円(定常運用) 依頼が月10〜60件で、範囲を決められる 契約範囲の外は頼めない
採用(雇用) 422万〜693万円 常時対応が要り、業務が増え続ける 1人では休みが取れない
派遣 約630万円(フルタイム) 期間を区切った増員が必要 稼働の下限が大きい
兼任継続 追加費用なし 端末50台未満で、拠点が1つ 担当者が辞めると止まる

派遣の金額は厚生労働省の集計によります。令和6年度の労働者派遣事業報告書では、派遣料金の平均が8時間換算で26,257円でした。月20日フルタイムで受け入れると月525,140円、年間では約630万円です(出典:厚生労働省 令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報))。

中小企業の情シス業務には、1日8時間ぶんの仕事が毎日あるとは限りません。週1日だけという受け入れ方もできますが、そのぶん単価と募集の難度が上がります。

業務委託・派遣・雇用は、責任の持ち方が違う

契約形態を知らずに安いほうを選ぶと、あとで頼めない業務が出ます。

業務委託 労働者派遣 雇用
仕事の指示を出す人 受託した会社 受け入れた自社 自社
依頼の単位 業務の範囲 労働時間 職務
頼めないもの 契約範囲の外 派遣が禁止された業務 就業規則の外
費用のかたち 月額または件数 時間単価 給与と法定福利費

業務委託で発注者が作業者に直接指示を出すと、法律上は派遣として扱われます。昭和61年労働省告示第37号は、請負として認められる条件のひとつに「労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと」を挙げています。ここでの「自ら」は受託した会社のことです(出典:厚生労働省 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)。

つまり外注では「この作業をこの手順でやって」と個人に言えません。渡せるのは業務の範囲と成果で、手順ではありません。細かく手順を指定したいなら、派遣か雇用を選ぶことになります。

採用1人は年額でいくらか。外注と同じ物差しに直す

採用を年収だけで見積もると、2割ぶん外します。厚生労働省の令和3年就労条件総合調査から、常用労働者1人1か月あたりの労働費用を引きます。

項目 企業規模30〜99人(全産業) 情報通信業
現金給与額 292,370円 466,023円
現金給与以外の労働費用 59,635円 111,667円
労働費用総額(月) 352,005円 577,690円
年額(12か月分) 約422万円 約693万円

「現金給与以外」59,635円の中心は、法定福利費45,819円と退職給付等7,732円です。募集費675円と教育訓練費424円も含みます(出典:厚生労働省 令和3年就労条件総合調査の概況)。

採用費と教育費まで含めた総額が、採用1人の年額です。情報通信業の水準なら年約693万円、事務系なら年約422万円。自社の提示額と比べる目安になります。その1人が辞めれば体制はゼロに戻ります。

外注・採用・派遣・兼任継続の4つを年額で並べて比べた図

兼任のまま続ける方が安い会社もある

日々の対応を兼任者が続けるほうが合理的な会社があります。次の5つがすべて当てはまる場合です。

  • 端末が50台未満
  • 拠点が1つ
  • 業務システムがSaaS中心で、自社で運用するサーバーがない
  • 問い合わせが月20件以下
  • 兼任者が休んだ日に、1日なら止められる

この条件に収まるなら、追加費用なしで兼任を続けられます。困ったときの相談先を外に持つなら月1万〜5万円の軽いサポートを足し、それでも年額は12万〜60万円で採用の10分の1以下です。

ただし条件を1つでも外れると、兼任継続のコストは表に出ない形で増えます。対応の遅れは金額に現れず、担当者が辞めた日に初めて損失として見えます。5つのうち何個当てはまるかを、いま数えてください。

中小企業の費用相場はいくら?小規模は月1〜5万、中規模は月8〜25万

費用を決めるのは、頼む範囲です。中小企業が該当するのは次の2つの層です。

層 月額 年額 何ができるか
軽いサポート 1万〜5万円 12万〜60万円 スポット相談、単発の作業
ヘルプデスク定常 8万〜25万円 96万〜300万円 問い合わせ対応の定常運用、台帳とアカウント管理

運用設計やドキュメント整備まで含む3つ目の層は、複数拠点の会社や監査対応が要る会社の帯です。8サービスの実額と内訳は情シスアウトソーシングの費用相場|総額を出す7つの内訳にまとめています。

提供形態は3つ。常駐・リモート・スポット

同じ月額でも、来てもらう形が違えば中身が変わります。

形態 働き方 中小企業での成立しやすさ
常駐 週に何日か自社に来て作業する 稼働の下限が大きく、予算が合いにくい
リモート 電話・メール・チャットで対応し、必要なときだけ訪問 中心。上の2層はほぼこの形
スポット 1件ごと、または時間単位で依頼する 件数が少ない会社に向く

常駐の金額は公開されています。DeepApex株式会社の「情シスフォースLite」は1日4時間で月32万円、1日8時間で月48万円(税別)。株式会社コンピュータマネジメントの「ION」はシステム運用・保守が週3回からで月600,000円からです。

月10万円の予算で常駐を探すと、候補が1社も出てきません。中小企業の2層はリモートが前提だと考えてください。

料金体系は月額固定型と従量課金型

課金の単位は4つあり、同じ月10万円でも総額の伸び方が変わります。

型 課金の単位 提供元が公開している例
月額固定 業務の範囲 情シス代行パック ベーシック40,000円/スタンダード80,000円(税抜・月額)
台数 PC1台あたり トータルITヘルパー ヘルプデスク 1台あたり月2,000円から
時間 月の契約時間 情シス365 IT顧問 月100,000円から(月5時間)
頻度 週の訪問回数 ION システム運用・保守 月600,000円から(週3回から)

自社の数字で総額が動くのは台数型と時間型です。PC台数と月の問い合わせ件数は、社長に出す1枚へ入れてください。見積もりを頼むときにも、この2つを伝えます。情シス以外の業務もまとめて外へ出すつもりなら、BPaaSとBPOの費用の内訳を解説した記事も合わせて確認してください。

従業員規模別の目安。30名・80名・150名のモデル

従業員数は入口の目安にしかなりませんが、当たりを付けるには使えます。1人1台を前提にした概算です。

従業員 端末台数の目安 月の問い合わせ件数 当てはまる層 月額
30名 30〜40台 10件前後 軽いサポート 1万〜5万円
80名 80〜100台 30件前後 ヘルプデスク定常 8万〜25万円
150名 150〜200台 60件前後 ヘルプデスク定常の上限 25万円前後

30名の帯でできるのは、困ったときに聞ける相手を1つ持つことです。日々の対応は兼任者が続けます。80名の帯に入ると問い合わせを毎日受ける体制になり、台帳とアカウントの管理も委託できます。150名を超えると1つの契約に収まりにくく、範囲を分けて2社に出す会社も出てきます。

金額を決めるのは人数ではなく、端末台数と拠点数です。台数型のサービスなら、1台あたり月2,000円で100台なら月20万円。従業員80名でも拠点が3つあれば、同じ80名の1拠点より上の帯になります。

端末台数と拠点数を数えて費用の帯を見積もる場面

見積もりが跳ねる3条件は、拠点数・対応時間・端末台数

相場を見ても自社の金額は出ません。動かす変数が3つあるためです。

  • 拠点数:2拠点目から訪問の交通費と移動時間が乗る
  • 対応時間:平日9時から18時の外を含めると、待機する人員が要る
  • 端末台数:台数型はそのまま比例し、初期費用も台数で動く

初期費用の例があります。NTT西日本の「情シスおまかせコンシェルジュ」は機器20台までが66,000円で、以降は10台ごとに7,700円が加算されます。

社長に出す1枚には、この3条件も添えてください。3社に見積もりを頼むときは、同じ前提を渡します。前提が揃っていない見積もりは、金額を並べても比較になりません。

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中小企業が得る効果は?属人化と退職リスクを同時に下げられる

効果と注意点を、中小企業に固有のものだけに絞ります。大企業なら「コア業務に集中できる」で済む話が、中小企業では別の形で効くためです。

  • 効果:担当者が休める、退職で止まらない、判断の相談先ができる
  • 注意点:社内にノウハウが残らない、費用対効果が見えない、1社に依存する

効果と注意点は、セットで見てください。担当者が休める体制を作る一方で、ノウハウの共有や契約を見直すための備えも要ります。注意点への手当ては、契約の段階で決めておけます。

効果は3つ。最大は担当者が休める状態になること

中小企業にとって大きい効果は、1人が倒れても止まらなくなることです。

効果 変わること 測り方
担当者が休める 有給の日に依頼が止まらない 不在日の未処理件数
退職で止まらない 引き継ぎ相手が社外に残る 台帳の更新日
判断の相談先ができる 調べる時間が減る 一次回答までの時間

コスト削減を第一の理由にすると、期待を外します。月10万円の契約で減るのは兼任者の時間であって、支出ではないからです。支出はむしろ増えます。

1人しか知らない作業がどれだけあるかは、外注する前に洗い出せます。業務の洗い出しと時間の測り方はAXの進め方を解説した記事にまとめています。

注意点は3つ。ノウハウと費用対効果と依存

注意点も3つあります。どれも契約の書き方で減らせます。

注意点 起きること 契約前の手当て
ノウハウが残らない 設定の理由が社内に伝わらない 月次報告に変更内容と理由を含める
費用対効果が見えない 継続の判断ができない 開始前に2つの指標を決める
1社に依存する 替えられなくなる 台帳と管理者権限を自社に置く

1つ目のノウハウは、報告書の型で防げます。次の見出しで項目を挙げます。2つ目の費用対効果は、開始前に何を測るかを決めていない会社で問題になります。測る対象は後の章で2つに絞りました。

3つ目の依存は、前の章で決めた管理者権限の置き方がそのまま効きます。1社としか取引がない状態でも、台帳と権限が自社にあれば乗り換えの見積もりが取れます。替えられる状態を作っておくことが、値上げへの備えになります。

ノウハウが残らない問題は、月次報告の型で防げる

ノウハウは自然には残りません。報告書に何を書くかを、契約の時点で指定してください。

月次報告に含めてもらう項目は5つです。

  • 今月受けた依頼の件数と、種類ごとの内訳
  • 一次回答までの時間の平均と最長
  • 判断が要って社内へ戻した件の数と内容
  • 変更した設定と、変更した理由
  • 翌月の予定と、社内にやってほしいこと

月次報告を標準で出す会社でも、内容が件数の集計にとどまることがあります。「変更した理由」と「社内へ戻した件」の2つを足すだけで、報告書が引き継ぎ資料になります。この2項目を出せるかを、契約前に聞いてください。

外注先の選び方は?中小企業は5点だけ見る

比較サイトの項目をすべて埋める必要はありません。中小企業がふるいにかけられるのは、次の5点です。

  • 最低契約金額と最低契約期間
  • 対応できる業務の範囲
  • 対応時間と一次回答までの時間
  • セキュリティの実務(再委託と情報の持ち出し)
  • 同じ規模の顧客がいるか

順番にも意味があります。上の2つで候補が絞られるため、そこから見ると時間を使わずに済みます。

最低契約金額と最低契約期間で、まず半分が落ちる

最初に聞くのは金額の下限と期間の下限です。

上位の記事はこの足切りを書きません。書き手が自社で受けられる前提に立っているためです。実際には最低ラインが公開されています。株式会社BTNコンサルティングの「情シス365」は初回契約が3か月から。フレックシステムズ株式会社の「フレクシーサポート」は契約が基本1年で、中途解約は4か月目以降から1か月前の申し出が必要です。

月10万円で探していたら下限が月30万円だった、は最初の3社で起きます。問い合わせフォームに書く1行目を「月◯万円、◯か月から検討」にすると、合わない会社が自分から外れてくれます。

対応できる業務の範囲が、自社の一覧と合っているか

次に見るのは範囲です。サービス名より、業務名の一覧で突き合わせてください。

同じ「情シス代行」でも、プランによって含まれる業務が違います。フレクシーサポートのIT顧問プランは、IT相談窓口と相談会にだけ印が付いており、キッティングやアカウント管理には付いていません。表の印を1行ずつ見ないと、契約したあとで「それは範囲外です」となります。

自社の一覧は前の章の棚卸しで作ったものを使います。印の付いていない業務が3つ以上あるなら、その会社は候補から外してかまいません。

対応時間と一次回答までの時間を、数字で確認する

対応時間は「平日9時から18時」だけでは足りません。受け付けてから最初の返事が来るまでの時間を、数字で聞いてください。

問い合わせの受付から一次回答、復旧までのどこを数字で決めるかを示した図

まず受付の時間帯と、一次回答までの目安時間を聞きます。訪問が必要な場合は来てもらうまでの時間を、時間外に障害が起きた場合はその扱いを確認してください。このうち一次回答の目安を数字で答えられない会社は、社内の体制が固まっていない可能性があります。

兼任者の負担が減るかどうかは、解決までの時間ではなく一次回答の速さで決まります。返事が来るまで、社内では兼任者が問い合わせ主から追われ続けるためです。

セキュリティは、再委託の有無と情報の持ち出し方を見る

認証の有無だけで判断しないでください。聞くのは実務の4点です。

  • 作業する人は自社の社員か、再委託か
  • 作業に使う端末は誰が管理しているか
  • 自社のデータをどこに保存し、契約終了時にどうするか
  • 担当者が交代したとき、アカウントをいつ止めるか

外注先を選ぶときは、認証の有無と合わせて上の4点を確認してください。再委託を使っている場合も、誰が作業し情報をどう扱うのかを説明してもらいます。

同規模の実績があるか。大企業の実績は参考にならない

「従業員100名以下の顧客は何社ありますか。その会社の窓口は専任ですか、兼任ですか」。実績を聞くときは、この2つを確かめてください。

大企業向けの実績は、発注側に専任の情シス部門がある前提で積まれたものです。窓口が兼任1人の会社とは、依頼の出し方も判断の速さも違います。同じ手順を持ち込まれると、提出物の量に社内が追いつきません。

社数や有名企業名と合わせて見たいのは、兼任の窓口を相手にした経験です。自社の体制で依頼を回せるかを判断する材料になります。

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始めたあと何を見る?3か月後に測る2つの数字

契約して終わりにすると、半年後に更新の判断ができません。開始前に測る対象を決めておきます。

  • 導入は4ステップで、決めることは最初の1か月に集中している
  • 3か月後に見るのは2つの数字だけ
  • 半年で増やすか、減らすか、やめるかを決める

社長への報告には、費用だけでなく導入後の見直し時期も添えます。3か月後に測る数字と、半年後に判断する内容を先に整理しておきます。

導入は4ステップ。最初の1か月で決めることが決まっている

導入は4つの段階に分かれ、決めることは最初の1か月に集中します。

時期 やること 決まるもの
契約前 台帳と依頼の棚卸し 外へ出す業務の一覧
1か月目 環境調査と引き継ぎ、窓口の指名 誰が何を決めるか
2〜3か月目 依頼を流して記録を取る 実際の件数と所要時間
3か月目末 2つの数字で見直す 範囲を広げるか狭めるか

契約前の棚卸しを飛ばすと、1か月目の環境調査でそのぶんの時間を使います。棚卸しといっても、端末の一覧と直近3か月の依頼を書き出すだけで足ります。

つまずくのは1か月目です。環境調査では「この設定を入れたのは誰か分からない」が出てきます。分からないものは分からないまま渡してください。調べ直してから始めようとすると、そこで時間が消えます。窓口の指名も1か月目に済ませ、2か月目からは依頼を流しながら記録を取ります。

測るのは「一次回答までの時間」と「兼任者の手離れ時間」

測る数字は2つに絞ります。多いと誰も記録しなくなるからです。

兼任者の1週間の時間配分を導入前と3か月後で比べた図

1つ目は一次回答までの時間です。依頼を出してから最初の返事が来るまでを記録し、3か月目の平均と最長を1か月目と比べます。

2つ目は兼任者の手離れ時間です。ITの用事に使った時間を週単位で記録し、導入前からどれだけ減ったかを比べます。週8時間が週3時間になったなら、月20時間ぶんが経理や総務に戻ったということです。社長への報告では、減った時間を本来の仕事に戻れた時間として示してください。

半年で増やすか、減らすか、やめるかを決める

半年目に3つのどれかを選びます。続けるという選択肢を外してあるのは、惰性で更新されるのを防ぐためです。

見えている状態 判断 次にやること
依頼が毎月契約範囲を超える 増やす 上位プランと差額を比べる
契約時間が毎月余っている 減らす 軽いサポートの層へ落とす
窓口の工数が、減った時間を上回る やめる 範囲を絞るか、契約を終える

半年目の見直しでは、上の表に沿って依頼の量と窓口の工数を確かめます。契約を終える場合に備え、台帳と管理者権限は最初から自社に置いておきます。外注先にしかないと引き継ぎの交渉が要り、数か月ぶんの費用が余分に出ます。3つの選択肢を検討する日を、半年目の予定に入れておいてください。

中小企業の情シスアウトソーシングに関するよくある質問

Q. 従業員が何名から情シスのアウトソーシングを検討すべきですか

人数では決まりません。端末台数と拠点数、月の問い合わせ件数で決まります。目安は端末50台未満で1拠点なら軽いサポート、50台を超えて問い合わせが月30件前後ならヘルプデスクの定常運用です。同じ80名でも拠点が3つあれば、金額は1拠点の会社より上の帯になります。

Q. 情シスBPOと情シス代行は同じものですか

指す範囲が違うことがあります。情シス代行は日々の運用を代わりに回す意味で、情シスBPOは業務の流れごと引き受けて改善まで含む意味で使われることがあります。ただし業界で定義が統一された言葉ではないため、契約前は対応業務の一覧で確認してください。

Q. ひとり情シスの会社でも依頼できますか

依頼できます。ただし窓口はそのひとり情シスに残してください。依頼の優先順位を決める役だけは外へ出せないためです。窓口に必要な時間は、月1回の報告と日々の取り次ぎで足ります。

Q. 中小企業でも常駐で来てもらえますか

来てもらえます。ただし費用は大きく上がります。公開されている常駐型の金額は、1日4時間で月32万円、1日8時間で月48万円という水準です。月10万円前後の予算で探しているなら、リモート中心のプランを見てください。

Q. 外注したあと、社内の担当者は何をすればよいですか

窓口と判断が残ります。具体的には依頼の取り次ぎ、優先順位づけ、月次報告を受けての範囲の見直しです。空いた時間の使い道は先に決めておかないと、別の業務で埋まります。残る業務と外注後の役割は情シスのアウトソーシングはどこまで?残す業務7つの基準で詳しく扱っています。

まとめ:人数ではなく、端末台数と拠点数で決める

情シスを外に出すかどうかは、従業員数では決まりません。自社の状態を3つに当てはめてください。

自社の状態 答え 月額
端末50台未満・1拠点・SaaS中心・問い合わせ月20件以下 兼任のまま続ける。相談先が要るなら軽いサポートを足す 追加費用なし(サポートを足すなら1万〜5万円)
端末50〜150台・問い合わせ月30件前後 ヘルプデスクを定常で出す 8万〜25万円
複数拠点・自社サーバーあり・監査対応が要る 運用設計まで出す 月30万円から

3つ目の帯に入る会社は、8サービスの実額を並べた情シスアウトソーシングの費用相場|総額を出す7つの内訳で内訳まで確認してください。

どの答えになっても、先に決めるのは社内の窓口です。兼任者を1人指名し、台帳と管理者権限を自社に置いてください。この2つがないまま契約すると、月額を払いながら負荷が変わらない状態になります。

まず端末台数と拠点数、月の問い合わせ件数の3つを数えてください。社長に出す1枚には、その数字に合う選択肢と費用の目安をまとめます。社内の窓口を誰にするかと、最初の3か月で測る2つの数字も添えてください。

料金は2026年9月16日時点で各提供元の公式ページに掲載されていた表記によります。比較メディアが掲載している金額は使っていません。なお当社は情シス代行サービスを提供していないため、この記事に紹介できる自社サービスはありません。

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Accelport株式会社 編集部

業務の見極めから実装の進行管理までを引き受ける「社外AX部」を提供しています。現場で得た知見をもとに記事を制作しています。

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