内製化支援とは?戻す業務と戻さない業務の5基準
保守費が毎年上がり、役員会で「この費用はいつまで払うのか」と問われた。そこから内製化支援を調べ始めた方に向けて書いています。
最初に決めるのは、どこに頼むかではありません。外に出している業務のうち、何を戻し、何を戻さないかです。ここを決めずに探すと、相手の売り物に合わせて範囲が決まります。
この記事では、戻す業務と戻さない業務を分ける5つの基準を中心に、支援の3つの型と移行期間の費用を整理しました。

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内製化支援とは?外注している業務を社内で回せる状態にする支援
内製化支援は、外に出した業務を自社の人員で回せる状態にするまでを外部が手伝うサービスです。先に2つ確認します。
- 目的は、委託の範囲や費用を自社で見極める判断を社内に戻すこと
- この言葉には、技術基盤の話と業務の話が混ざっていること
内製化支援の目的は、人を貸すことではなく判断を社内に戻すこと
戻したいのは、保守費や委託する範囲を自社で見極める判断です。作業の中身が見えなければ、値上げが妥当かも判断できません。人手を増やしても、この判断は戻ってきません。
例外処理まで社内で引き受けるかは、後の5つの基準で分けます。
契約形態は外部委託とは?4つの契約形態と出す前の3条件で整理しています。
「内製化支援」には2つの別物が混ざっている。AWSの話か、業務の話か
この言葉には、技術基盤の内製化と業務の内製化が混ざっています。
片方はクラウド上でのシステム開発を自社でできるようにする話です。AWSは2021年3月に「内製化支援推進AWSパートナー」という枠組みを公表しており、公式ブログには賛同企業として10社が挙がっています。当社はこの認定を受けていません。

こちらを探して来た方は、AWS公式の説明が早いです(出典:AWS公式ブログ)。以降で扱うのは業務の内製化だけです。
内製化支援サービスの型は3つ。頼む相手で戻る範囲が変わる
提供物は3つに分かれます。どれを買うかで、半年後に社内へ戻っているものが変わります。
| 項目 | 研修型 | 伴走型 | 代行型 |
|---|---|---|---|
| 社内に移るもの | 知識 | 手順とドキュメント | 移さない |
| 自社の例外処理 | 扱わない | 書き残せるもの | 委託先が持つ |
| 想定する期間 | 数日 | 6ヶ月から1年 | 期限を置かない |
研修型は知識が移るだけ。業務そのものは戻らない
研修型で移るのは知識で、業務は移りません。
扱うのが一般的な手順であって、自社固有の例外ではないためです。戻して困るのは月末の締めで出る例外処理で、教科書には載っていません。
厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査では、OFF-JT費用の労働者1人当たり平均額が2.0万円でした(令和6年度実績。出典:mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00233.html)。この水準の研修だけで、自社の例外処理まで戻すのは難しいと考えてください。
伴走型は一緒に手を動かす。移るのは手順とドキュメント
伴走型で移るのは手順とドキュメントです。
実際の業務を一緒に回しながら、やり方を書き残す形を取るためです。研修と違って題材が自社の実例になり、書き残せる例外処理も対象です。
ただし移るのは書き残せた部分だけです。契約前に、受け取るドキュメントを品目で決めてください。「ナレッジ移転」のままでは、何が残るか確定しません。
代行型は担い手ごと引き受ける。戻すのは最後でよい
代行型は業務の担い手ごと外部に置き続ける形です。
戻すことを目的にしていないため、支援サービスの一覧に並ばないことがあります。それでも外せません。戻さないと決めた業務にも担い手は要るからです。
情報システムなら監視と一次対応を外に置き、委託先との折衝だけを戻せます(情シスのアウトソーシングはどこまで?残す業務7つの基準)。
戻していい業務と戻さない業務はどう分かれるか。5つの基準
いま委託している業務を一つずつ、次の5つの基準に照らしてください。
外へ出す側の判断はBPOコンサルとは?代行との違いと出す前の5つの確認にまとめました。
基準1 手順書に落とせるか。判断が残る業務は戻しても回らない
手順書に落とせる業務は戻せます。
担当者が代わっても同じ結果が出るためです。判断が残る業務は、戻した先で担当者が毎回悩み、結局その人しかできない状態になります。
入力と出力の対応表を書いてみて、「例外はケースバイケース」と書く欄が残るなら、そこは戻さない側です。生成AIで手順化できる範囲は広がりましたが、広がったのは対応表を書ける部分だけです。
基準2 月1回以上あるか。年に数回の業務は社内に技能が残らない
年に2回の業務を戻すと、次に手を動かすのは半年後です。手順書を読み直して前任者に聞くだけで半日が消え、毎回やり方を思い出すところから始まります。
月1回あれば、前回の記憶が残るうちに次が来ます。月1回以上を、頻度の面で戻す目安にします。年次の決算対応は目安から外れます。
基準3 担い手を2人作れるか。1人に戻すのは外注より危ない
担い手を2人用意できない業務は戻さないでください。
1人に戻すと、その人が辞めた時点で業務が止まるからです。外注していれば、担当者が交代しても相手の会社が引き継ぎます。
IPAの「DX動向2026」では、DXを推進する人材の「量」を不足と答えた企業が85.5%、「質」では88.8%でした(2025年度。出典:ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/rcu1h…)。
基準4 法改正や制度改定に追随が要るか。追随コストは外に置くほうが安い
制度への追随が要る業務は、外に置いたほうが安くつきます。
常に最新を追う人が1人必要になり、その時間は改定の有無にかかわらず毎年かかるためです。
社会保険の料率が例になります。全国健康保険協会の都道府県単位保険料率は、令和8年度も3月分から改定されています(出典:kyoukaikenpo.or.jp/about/business/insur…)。
基準5 その業務が採用の理由になるか。ならない業務を戻すと人が辞める
採用の理由にならない業務は、戻しても定着しません。
戻した業務は、誰かの職務内容になるためです。求人票に書いて応募が増えない業務は、配属された人にも魅力になりません。
厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、前職を辞めた理由の「仕事の内容に興味を持てなかった」が男性4.4%、女性3.6%でした(出典:mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/d…)。最多ではありませんが、仕事の内容も辞める理由に挙がっています。

内製化の進め方は5ステップ。棚卸しから並行稼働まで
戻す業務が決まったら、移す順番を表にします。
| ステップ | やること | 目安の期間 |
|---|---|---|
| 1 | 委託範囲の棚卸し | 1ヶ月 |
| 2 | 5基準を当てて戻す順番を決める | 2週間 |
| 3 | 並行稼働 | 3ヶ月 |
| 4 | ドキュメント整備 | 3と並行 |
| 5 | 引き渡し後の退路確保 | 3ヶ月 |
棚卸しでは契約書の範囲より、実際の依頼を拾います。月次の依頼メールを見ると、契約にない依頼が見つかることがあります。順番は、手順が固まっていて毎月発生するものからです。まとめて戻すと、止まったときにどれが原因か分かりません。
並行稼働は委託先と社内で同じ業務を回す期間です。月次業務なら3ヶ月が目安で、3回通せば例外が出そろいます。引き渡し後も3ヶ月は戻せる状態を残します。契約を即時に終了すると、戻したい時点で交渉から始めることになります。

内製化が失敗する4つのパターン。最大の落とし穴は移行期間の二重コスト
原因は4つに収まります。どれも支援会社の品質より、移行の設計で決まります。
- 移行期間に費用が二重で出ることを稟議に入れていない
- ドキュメントに落ちない判断が残る
- 担い手が1人しかいない
- 戻しすぎて、その部署が保守だけの組織になる
移行期間は委託費と育成費が二重に出る。半年ぶんを先に見込む
移行期間は委託費と育成費の両方が出ます。
並行稼働の間は委託先への支払いが続き、社内の人件費と支援料が乗るためです。準備と引き渡しを足すと、二重になる期間は6ヶ月程度になります。

この6ヶ月程度の二重コストを、稟議の総額に入れてください。費用とあわせて備えたいのが判断の引き継ぎです。書き残せたものしか引き継げないため、並行稼働で例外が出るたびに判断を1行ずつ残します。
担い手が1人だと元に戻る。全部を戻すとその部署が保守要員になる
担い手が1人の内製化は、その人が抜けた時点で元に戻ります。
移行中は1人でも回るため、2人目を置く判断が後回しになるからです。ここで元の委託先に戻すと、二重コストを払った期間だけが残ります。属人化した業務の引き継ぎについてはAXの進め方を解説した記事で扱っています。
担い手の人数に加えて、戻す量にも注意が要ります。全部を戻すと、その部署は保守だけの組織になります。引き取る担当者が本来の業務にあてる時間も含めて、戻す範囲を決めてください。
内製化支援の費用はいくらか。型ごとの課金と総額の出し方
金額を公開している会社は限られます。型が違えば課金の単位も違い、見積もりを並べても比較になりません。ここでは課金の仕組みと総額に含める項目を整理します。
型別の課金の仕組みと、総額に入れ忘れる3つの費用
課金の単位は型ごとに違います。研修型は回数と受講人数、伴走型は月額と期間、代行型は引き受ける業務の範囲で決まります。見積もりでは、月内に入る稼働の上限と、範囲外の依頼が出たときの扱いを確認してください。
総額には、支援会社の見積書では拾えない次の3項目も入れます。
- 移行期間の二重払い:並行稼働の間も委託費は出ていく
- 社内工数:引き取る担当者が本来の業務にあてられなくなる時間
- ツールと権限:監視やチケット管理の移管にかかる費用
内製・外注・伴走を同じ物差しで比べる
下の表は、毎月の支出・人が抜けたときの影響・数え忘れやすい費用の順に見てください。社内の人件費を数えないと、内製が安く見えます。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、情報通信業の正社員・正職員の賃金が月41万1000円でした。これは所定内給与額で、賞与も残業代も含みません(出典:mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin…)。
| 見る項目 | 社内に戻す | 外に出したまま | 伴走で移す途中 |
|---|---|---|---|
| 毎月の支出 | 給与と事業主負担 | 委託費 | 委託費・支援料・人件費 |
| 人が抜けたときの影響 | 業務が止まる | 委託先が交代させる | 委託先が支える |
| 数え忘れやすい費用 | 社内工数と採用費 | 追加依頼の都度費用 | 二重払いの期間 |
内製化支援についてよくある質問
Q. 内製化とはどういう意味ですか
外部に委託していた業務を、自社の人員で回す状態にすることです。開発に限らず、経理・人事・調達・情報システムの運用も対象です。
Q. 内製化の目的は何ですか
委託の範囲と費用を自社で見極めることです。初年度は移行期間の二重払いで、費用はかえって増えます。
Q. 「内製化」の言い換えは何ですか
インソーシング、インハウス化、自社開発などが使われます。
Q. 内省化と内製化の違いは何ですか
内省化は誤変換です。「内製」は自社で実施すること、「内省」は自分を振り返ることを指します。
Q. 内製化支援は必ず頼んだほうがよいですか
頼むべきとは限りません。戻す業務が定型処理だけなら、委託先からの引き継ぎで足ります。
まとめ
内製化支援で最初に決めるのは、頼む相手ではなく戻す範囲です。5つの基準を再掲します。
| 基準 | 戻す側 | 戻さない側 |
|---|---|---|
| 1 手順書 | 対応表が書ける | 例外がケースバイケース |
| 2 頻度 | 月1回以上ある | 年に数回しかない |
| 3 担い手 | 2人置ける | 1人しか置けない |
| 4 追随 | 改定がほとんどない | 毎年の改定が要る |
| 5 採用 | 求人票に書ける | 書いても人が来ない |
移行期間の6ヶ月ぶんは、稟議に先に入れてください。役員に返す1枚には、戻す業務と戻さない業務を理由とともにまとめます。
内製に寄せるか外部に出すかを決めるときは、工程ごとに分けて考えます。判断の材料はAXとは?DXとの違いと自社でやる範囲を決める5つの問いに置いています。
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